【司法書士が解説!】相続の手続き、期限過ぎたらどうなる?
葬儀の準備やその後の相続手続きなど、人がなくなった後はやるべき手続きが多く降りかかってきます。
精神的にも肉体的にも大変な時期ですが、相続手続きには期限があり、時間も手間もかかるため、はやめに取り掛かる必要があります。
本記事では、司法書士が相続手続きにおけるポイントをいくつか解説します。
期限のある相続手続きとその内容
期限を過ぎてしまったらどうなる?
相続手続きの期限を過ぎると、相続人にとってさまざまな不利益が生じる可能性があります。
具体的には以下のようなデメリットがあります。
① 過料の発生
② 受け取るべき財産の未受領
③ 税金の増加
④ 借金の発生
これらの不利益を避けるためにも、期限内に手続きを行うことが重要です。
期限のある相続手続きのまとめ
期限のある相続手続きは以下の7つです。
・ 相続放棄・限定承認(3ヵ月)
・ 準確定申告(4ヵ月)
・ 相続税の申告・納付(10ヵ月)
・ 遺留分侵害額請求(1年)
・ 生命保険金の請求(3年)
・ 相続登記(3年)
・ 相続税の還付(5年10ヵ月)
それぞれの手続きには異なる期限が設定されているため、注意が必要です。
各相続手続きの詳細と注意点
ここからは、各相続手続きの期限とポイントについて解説します。
もし手続きが期限内に完了できそうにない場合、延長の申請をすることも可能です。
延長の申請や、その他の対処法ついても説明します。
【3ヵ月】相続放棄・限定承認
相続放棄と限定承認の手続きは、相続があると知った日から3ヵ月以内に行う必要があります。
この3ヵ月間は「熟慮期間」と呼ばれ、遺産相続手続きの中で最も短い期限です。
相続財産に負債が多い場合、相続したくない場合など、相続放棄を検討する場合はこの期間に申請を出す必要があります。
相続放棄と限定承認とは?
相続放棄は、全ての相続遺産を放棄することを指し、限定承認はプラスの財産だけを相続することを意味します。
相続放棄では資産も負債も放棄し、限定承認では資産から負債を差し引いたプラスの財産だけを相続します。何も手続きをしなければ、財産も借金も全て相続することになります。
手続きが必要な人
以下のような場合には、相続放棄や限定承認の手続きが必要です。
【相続放棄】債務超過のケースや特定の相続人に遺産を集中させたい場合
【限定承認】債務超過でもプラスの資産を相続したい場合や財産が不明確な場合
手続き方法
相続放棄を行うには「相続放棄の申述」、限定承認には「限定承認の申述」を家庭裁判所に提出します。
必要な書類として、申述書や戸籍謄本、被相続人の住民票の除票などが必要です。
期限延長の申立
熟慮期間を過ぎてしまいそうな場合、家庭裁判所に期間延長を申請することができます。
【4ヵ月】準確定申告
準確定申告は、相続人が相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内に行う必要があります。
期限延長はできないため、早めに手続きを開始しましょう。
準確定申告とは?
準確定申告は、故人に代わって相続人が確定申告を行う手続きです。
期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税が発生します。
【10ヵ月】相続税の申告・納付
相続税の申告と納付は、相続があると知った日の翌日から10ヵ月以内に行う必要があります。
期限内に納付できない場合は、延納や物納が可能です。
相続税の申告とは?
相続税の申告は、相続財産額に応じて納めるべき税金の申告と納付を行うことです。
【1年】遺留分侵害額請求
遺留分侵害額請求は、「相続の開始」と「遺留分侵害を知った日」から1年以内に行う必要があります。
相続開始から10年経過しても請求権は消滅します。
遺留分侵害額請求とは?
遺留分侵害額請求は、遺留分を下回っている場合に不足分を請求する権利です。
【3年】生命保険金の請求
生命保険金の請求は、相続があると知った日から3年以内に行う必要があります。
生命保険金の請求とは?
生命保険金の請求は、被相続人が加入していた生命保険の受取手続きを行うことです。
【3年】相続登記
2024年度から相続登記が義務化されるため、相続開始及び不動産所得を知った日から3年以内に行う必要があります。
相続登記とは?
相続登記は、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する手続きです。
【5年10ヵ月】相続税の還付
相続税の還付請求は、相続があると知った日の翌日から5年10ヵ月以内に行う必要があります。
相続税の還付とは?
相続税の還付は、相続税を払いすぎた場合に払い戻しを受ける手続きです。
このように、相続手続きにはさまざまな期限が設定されているため、早めの対策が重要です。